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秋田地方裁判所大館支部 昭和48年(ワ)27号 判決

原告

鹿角信用組合

右代表者

田村平太郎

右訴訟代理人

豊口祐一

被告

株式会社十和田農場

右代表者

永見勝茂

主文

一、被告は原告に対し金一〇〇万円およびこれに対する昭和四九年五月一日から完済まで年18.25パーセントの割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

三、この判決は仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一請求原因(一)1、(二)、(三)1の各事実はいずれも当事者間に争いがなく、〈証拠〉を総合すると、請求原因(一)2、(三)2、の各事実が認められこれに反する証拠はない。

さらに、請求原因(四)の事実は原告において自陳するところである。

又、抗弁2の事実は原告において明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。

二そこで抗弁2の成否について検討する。

被告が本件貸付の日になした定期預金が本件貸付に関するいわゆる両建預金の特約にもとづくものであること、およびその額が金一三五万円であることは当事者間に争いがない。

被告の右特約の無効の主張は、右特約が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、私的独占禁止法という)二条七項五号、一九条に違反するので無効である、という主張であると解される。

〈証拠〉によると、本件貸付前には原告は被告と何ら取引関係になかつたこと、本件貸付は連帯保証人である成田直利が原告の理事長であり、かつ、市議会議員であつた関係で同人の紹介と保証があつたので被告に貸付けることになつたこと、しかしもう一人の保証人成田勝太郎は原告と取引がなかつたこと、又、被告は物的担保も提出しなかつたこと、このような事情のもとで被告は原告において信用調査をなすいとまがないほどに貸付を急いでいたので、原告は被告に対し前記金一三〇万円の定期預金の両建を求めたところ、被告においてこれに応じ、本件貸付をなすに至つたこと、が認められ、右認定事実に反する証拠はない。右認定事実によると、被告は原告にとつて全く信用がなかつたので止むなくその補充のために連帯保証人に加え右両建の預金を求めるに至つたものであり、たとい右認定のとおりに両建預金額が貸付額の三〇パーセントに及ぶとしても、私的独占禁止法二条七項五号所定の自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引した場合に該当しないものというべきである。それゆえ、その余の点について判断するまでもなく、被告の両建預金の特約に関する抗弁は採用しがたい。

三以上認定の事実にもとづいて検討すると、計算上、原告は被告に対し金一〇〇万円およびこれに対する遅くとも昭和四九年五月一日から完済まで約定の年18.25パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める権利がある。

それゆえ、原告の本訴請求はすべて理由があるので、これを全部認容することとし、訴訟費用につき民訴法八九条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用し主文のとおり判決する。

(東孝行)

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